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無断転載はなぜいけないのか

まえがき

無断転載と言っても色々あります。正直、全ての事例を網羅するのは難しいです。
なのでここでは『TwitterやPixivで時々見かける悪意のない*1第三者の描いたイラストの無断転載』がなぜいけないのかという話に絞って色々書きたいと思います。

要するに「無断転載いけないって聞くけど何が悪いの」とか「むしろ転載していっぱい広まったら宣伝になるからいいじゃん」みたいなことを思っている人に読んでほしい感じの話です。

そもそも著作権とは

著作権は原則、作品を作った人に発生します。
Aさんが描いた絵は、Aさんに著作権があります。
このブログの文章は私に著作権があります。
あなたが子供の頃に書いた作文はあなたに著作権があります。

基本的に「作ったものをどうこうする権利は作った人本人にある」という大前提があります。ここまではいいでしょうか。

推測

きっと無断転載を悪いと思わずに繰り返す人にとって、作品ってこんな感じに認識されているんじゃないかなって思います。
「無料でいくらでも作れるもの」
「インターネット上にたくさんある」
「ひとつふたつ転載したくらいならバレない」

まるで絵描きが呼吸するだけで無尽蔵に新しい作品が出てくるような……。
もっと下品な言い方をすれば排泄物のような……。
そんな感じではないでしょうか。

そういう人達にとってはPixivで絵描きのページを巡回して絵を保存して別の場所にアップロードするって、くみ取り式便所の家をバキュームカーで周っているつもりなのかもしれません。
今時の人にバキュームカーは通じないですかね。


実際、絵描き側にもそんな感じで振る舞う人はいます。
「5分で描きました~」ってすごい落書きを上げる人とか、
自分の絵を「ゴミ絵」「クソ」みたいに卑下する人とか。
そういう人を見て「ゴミなんだから持って行ってもいいだろ」って言う人が出てくるのも理解できなくはないのです。(この部分は絵描き側にも問題があるかなと思います)

もしもイラストが一台の車だったら

でもね、違うんです。どう例えたらわかりやすいかなと思って、「車」に例えることにしました。
もし車でピンとこないほど若い方ならば、バイクとか、自転車とか、そういうので適宜読み替えてください。

絵描きのAさん、車を買う

絵描きのAさんは真っ赤でかっこいい車を持っています。
ポルシェとか、フォルクスワーゲンとか、そういう「うわあ高級車」って感じの車ではないですが、
それでも何ヶ月も悩んで買った、お気に入りの車です。

この「車」を「作品*2」と思ってください。

呼吸や排泄なんてレベルでぽんぽん所有できるものではないということがわかるでしょうか。
作品づくりにかかる時間は人により数時間~数ヶ月とだいぶばらつきがありますが、それは「車を買うために働いた時間」だと思ってください。
長い間貯金してやっと買った1台を、努力の結晶である「車」の外側だけ見て「お前こんないい車持ってんだ、ちょっと貸してよ」って全く知らない人から言われたり、何も言わずに勝手に乗り回されたらムカつきませんか?ムカつきますよね。
たとえ5分で絵が描けるような人であっても「どこの馬の骨とも知らないお前に貸すために車買ったんじゃねーよ!」ってなります。なりますとも。
ましてそれを「これ、僕の車なんだ~」と勝手に偽って自慢しているところを見てしまったら……。


叱られたり、一発殴られても仕方がないですね。*3

絵描きのAさん、車で出かける

Aさんはその車に乗ってドライブやショッピングに行きます。
そりゃそうですよね。車を買ったら普通乗ります。
絵の話に戻すと、絵が描けたら自分のパソコンからアップロードして公開することに当たります。
車で「どこに」行く/絵を「どこに」公開するかはもちろんAさんの自由です。

スーパーに行くと決めたら、スーパーの駐車場に車を停めて買い物に行きます。
その間に通りすがりの人が「あ、かっこいい車」って思うのは自由ですし、当然Aさんもスーパーの他の利用者に自分の車が見られることは承知しています。
もし「あの車かっこいい~」って声がAさんに聞こえてきても、ちょっとびっくりするかもしれませんが、自慢の車を褒めてもらえたので内心はちょっと嬉しいはずです。


でもそれは絵描きが認識している「公開範囲」での話です。
「Pixiv」で公開した絵は「Pixiv」の利用者に見てもらうことを前提としています。
他の投稿サイトでも同じです。


ここで登場するのが泥棒(無断転載する側)のBさんです。
BさんはAさんの車を「かっこいいから」という理由で盗んでしまいました。


もしスーパーの駐車場に停めてあったはずのAさんの車がいきなりBさんの家の駐車場にあったら悪い意味でびっくりするでしょう。
賞賛がAさんに届くかもわかりませんし、もしちょっと賢い人が「あ、これはAさんの車だな」と気づいてAさんに「Bさんの家に停めてあった車見たけどかっこいいね」なんて言ってもAさんとしては「なんでBさんの家に俺の車があるんだ!?」ってなって喜ぶどころではないですよね。
「Pixivで公開されている他者の絵を自分のサイトで勝手にアップロードする」とはこういうことです。

「宣伝してやってるんだからいいだろ」論の人は、多分その車をモーターショーにでも持っていったのでしょう。
はっきり言って「余計なお世話」ですよね……。
もし本気で何かの賞を狙ってたり、有名になりたいと考えている人だったら自分自身で目立つ舞台に作品を投稿しています。第三者が勝手に何かするのは本当に大きなお世話です。

絵描きのAさん、車を盗まれる

Aさんはとても悲しくなりました。
そして犯人を探し、ついに泥棒のBさんを突き止めました。

ですがBさんの言うことはどれもこれもおかしなことばかり。少し例を見てみましょう。


Bさんは言いました。「そこに停めてあったから持っていった。誰のものかなんて知らないし」
……これ、無断転載側の言い訳のひとつ「ネットで拾った絵だから、元々誰の絵かなんて知らない」と同じです。
そりゃあスーパーの駐車場、あるいは路上に停めてある車の持ち主は、第三者からすれば誰だかわからないものです。
でも少なくとも「あなたのものではない」のですから、持っていってはいけない。当たり前ですよね?


Bさんはこうも言いました。「無断転載してほしくなければ注意書きでも書いとけばよかったのに」
……あなたは街を走る車に「この車は私のものです、盗まないでください」ってでかでか書いてあるのを見たことがありますか?ないですよね?
勿論書いてないからといって盗んでいいわけじゃないです。
「盗まないのが当たり前、常識だから書いていない」だけなのです。
無断転載も同じです。「しないのが当たり前」だから、いちいち全ての絵に注意書きがされていないのです。


Bさんはこんなことも言いました。「そんなに無断転載されたくないんならそもそも公開しなきゃいいのに」
……これ「車を盗まれたくなければそもそも車を買わなきゃいいのに」って読み替えるとなかなかひどい論だと思いませんか。
完全に泥棒側の詭弁なんですよ。


このあとAさんはどうしたでしょうか?
諦めてまた新しい車を買ったかもしれません。
もう盗まれたくないから二度と車は買わないかもしれません。
いずれにせよ軽率なBさんの行動がAさんを深く傷つけてしまったのです。

絵描きのAさん、他にもこんなトラブルが

車を盗まれたAさんの家にある日、Cさんという知らない人が乗り込んできました。
「お宅の車がうちの子をはねて怪我をさせたのよ!治療費払ってよ!」

Aさんは全く身に覚えがないのですが、防犯カメラには確かにAさんの車が映っていて……。
おそらく誰かがAさんの車を勝手に運転して、事故を起こしたのでしょう。



「無断転載された絵で何らかのトラブルが発生した場合」の話です。
非常に事態がややこしくなります。
主にこの関係のトラブルが発生するのは企業が間に入った場合です。
「あなたのイラストを投稿してください!巻末に掲載します!」みたいなのはよくある話ですが、これに自分以外の他者が描いたイラストを投稿し、それが掲載されると……ああもう、ややこしいですね。
もしその絵に何らかの問題があった場合、苦情は何処に行くでしょう?まずは当然、出版社ですね。
しかし中には「この絵!Pixivで見たやつとそっくり!あいつか!」と、元の絵描きさんに直接文句を言う人も出てくるかもしれません。
そうするともう事態は泥沼です。なんとか無断転載したBさんを見つけて懲らしめないと収拾がつかなくなってしまいます。


同じような理由で「他人の描いた絵を勝手にLINEスタンプにして販売する」「Tシャツにプリントして売る」とかその辺も当然ながらぜーんぶダメです。
お金が絡むとこの手のトラブルは更に厄介になるため、場合によってはBさんもきついお説教だけでは済まなくなるでしょう。最悪前科がつくかも……。

絵描きのAさん、本当はどうしたかったのか

「あれもだめ!これもだめ!なんなの!つまり絵描きは面倒臭いから関わるなってことなの!?」
……これまでの話を読んでそう思った人は、ある意味本当にそうしたほうがいいかもしれません。
あなたの意識が変わらない限り、必ずどこかでトラブルが発生します。それを未然に防ぐために関わらないというのは、ある意味、正しい判断です。

でも「やっちゃいけないことはわかった!でもそれなら私達は気に入った絵を見つけたり人にオススメしたい場合はどうしたらいいの?」
と思った善良なDさん、そしてあなたにはもう少しお話を続けましょう。


何がダメなのか。これまでの事例はどれも「勝手に」「無断で」という言葉がつきましたね。
つまり、許可を取ればいいのです。
「Aさんのあの車かっこいい!ちょっと貸してほしいなあ」って思ったらAさんにその車を貸してほしいと頼めばよいのです。

頼み方も大事です。あなたがAさんだったとして、
Bさん「お前の車貸せよ」
Dさん「駅に家族を迎えに行きたいのであなたの車を少し貸してください」
どっちに車を貸したいですか?
Dさんですよね?
「丁寧に頼む」「目的をちゃんと伝える」ことが大事です。
勿論目的外のことに使用したり、転載許可を得られたからといって「これ僕が描いたんだよ」はダメですよ。

ただ、OKするかどうかはAさん次第です。
どんなに丁寧に頼んでもお断りされてしまうことはあるでしょう。
ですが、だからと言ってAさんを責めないでください。
あなたに事情があるように、AさんにはAさんの事情があるのですから。

(基本的に「素材」「転載可」などと書かれていないイラストについては、他者が利用することを前提にしていないものがほとんどです。
ですので「あなたの絵すごく気に入りました!ブログの背景に使っていいですか?」は許可が下りない可能性が高いです。
ただ「あなたの絵すごく気に入りました!私のパソコンの壁紙にしていいですか?」はちょっと難しい言葉を使うと「著作物の私的利用」に当たり、許可される可能性が高いです。*4

他者の作品を何らかの目的に使いたい、という場合はその目的もちゃんと吟味した上で依頼しましょう。
また「お金を払ってくれたらいいよ」などの形で許可が出る場合もあります。その場合提示された金額を自分は払えるのか、などの「自分の側で妥協できるライン」も事前に決めておくとよいでしょう。)


また、単に「この人の絵すごい!」と言うだけなら、その人のPixivや作品URLを紹介するだけでよいのです。
絵そのものを転載する必要はありません。
Twitterであればその絵のTweetをリツイートしたり、ツイートのURLをコピペして一緒に紹介するという方法もあります。


Twitterのアイコンにかわいい絵を使いたい!でも気に入った絵をそのまま使ったら無断転載になるし……でも私は絵が描けない!絵描きの人はずるい!私だってかわいいアイコンにしたい!だから無断転載する!」
……アイコン無断転載の話で以前見た論です。
「絵描きは(絵を描けるという点で)私より恵まれているのだから多少のことは大目に見るべきだ」論とでもいいましょうか。
絵描きは既に申し上げた通り、呼吸と同レベルで絵を産出しているわけではありません。
あなたには見えない部分で努力しています。
生まれ持っての才能というのもあるかもしれませんが、絵は基本的に継続して描かないとどんどん下手になります。逆に言えば鍛錬である程度は上達します。

しかしここでお話したいのは絵がうまくなる方法ではなく、かわいいアイコンを使う方法でしたね。
一つ目の手段としては、既にある絵を、作者の人に「アイコンにしていいですか」と許可を得ることです。
二つ目の手段としては、最初から「アイコンに使っていいですよ」と言っている素材サイトからアイコンをお借りすることです。勿論、そういうサイトには必ず「利用規約」というものがありますから、それを守ってください。
Twitterアイコンで有名どころというと、アイコン屋めがぴこさん辺りでしょうか。私も以前お世話になりました。(今は自作絵です)*5*6
三つ目の手段としては、絵描きの人にお仕事として依頼して描いてもらうことです。
お仕事……?なんだかハードルが高い……?と思うかもしれませんが、人によっては「無料で描きます」と言っている人もいますし、
ココナラという500円で色んなお仕事を受け付けますよっていうサイトに、似顔絵・イラストカテゴリもあります。
似顔絵・イラストの作成が500円 | ココナラ

おしまい

さて無断転載がばれてこっぴどく怒られたBさん、それでもAさんの絵が好きなのです。
やさぐれて道を歩いていると、DさんとAさんが一緒にドライブしているところを見かけました。
「ケッ、あいつはいいよなあ、Aとナカヨシでさ……」
「本当に反省しているかい?」
すると突然Bさんの真横に真っ赤な車が停まりました。Aさんの車です。顔を出したのは勿論Aさん。
「無断転載は悪いことだってわかったね?もう二度としないね?」
「はい、反省しています。もう二度としません」
「わかったよ、じゃあ君も乗りな」
「いいんですか?」
「ちゃんとマナーを守って僕の絵を好きだって言ってくれるなら、それでいいよ」
そして3人は仲良くドライブに行きましたとさ。よかったね!*7

*1:この場合の悪意とは「特定人物に対する嫌がらせのために故意に無断転載行為を繰り返し行う」など無断転載を悪いことと認識しながら行うこととします。そういうのは対人トラブルなので当事者同士で根本原因を解決しないと無理です

*2:今回は絵描きのAさんなのでイラスト

*3:個人的には殺されないだけありがたいと思えって感覚です

*4:より厳密に言えば許可を得る必要がない

*5:ちなみにはてなで使用している茶髪の男の子のアイコン(テッド)は、第10回名古屋村の名札画像(azumaさん作)であり、アイコン等二次利用が許可されているものです

*6:更に言えば私のTwitterの背景画像に使用しているリカオンの画像はパブリックドメインの画像であり、ヘッダーの糸満市の画像は私が実際に沖縄に行った時に撮影した写真をトリミングしたものです

*7:現実はここまで都合よくいかないので無断転載はやめましょう