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ダイレクトマーケティングブログ

メイキング(3000字闇殺)

3000字闇殺(http://privatter.net/p/254816)のメイキングです。
ぶっちゃけるとこれとあんまり変わらないのですが、せっかくなので。

1.ネタ決め
とりあえずお風呂に入りました。*1
シャンプーしながら
「とりあえず3000字のほうから考えるか〜。やっぱりRTお題だし濃厚なホモはやめておくのが無難だよな〜全年齢……。いつもと違うヤツとか……とりあえず今温めてあるネタをここで使っちゃうのは勿体無いよな〜」
コンディショナーしながら
「普段書いてなくてーなんか書けそうなのー……あー、闇殺書くか。でも闇殺は既に考えてるネタがー……別に使わなきゃいいかー。全年齢で読める闇殺……過去……あー、過去……とか……」

こんな感じで「モチヤッコ被ったフジオがフジキド一家と遭遇して点描飛んでそうなフジキドに『大丈夫ですか?』って紳士的に声を掛けられる事案」まで頭の中でまとめます。
お風呂あがってからとりあえずメモしました

2.書き始め
「思いついたら即実行」とマサシが言ってはいませんが、書き始めます。
とはいえその日はお出かけを控えていたので、あんまり遅くなるようなら寝ようと思いつつ。
Twitter見てたら全然進まなかったので、引きこもります。

「フジオとフジキドが大学内で会うなら学祭かなーOBとかかなーああでもOBとかにするとフジキドの年齢実際ややこしくなるなー」
「そもそもなんでチラシ配ってるんだろうなー」
「傘ささずに屋外でチラシ配ってるってことは晴れだよなー」
と完全に行き当たりばったりで話を書いていきます。目的の描写にいたるまでの疑問点をとりあえず潰していくスタイルなのかもしれません。(人はそれを普通背景描写とか言います)

この辺りで、字数がちょっと足りないような気がしてきます。

3.書き進め
ホモみを意識して表現したりもします。
例えば「フジオは空いている手を差し出された手にそっと重ねた。直後、強く握られて引っ張られる。男の力だ。」の部分。
フジキドが男であることは散々描写されてるので、ここで敢えて「男の力だ」とか書く必要まったく無いのですが敢えて書きます。ホモです。

「んーでもこれだけでフジキドZOKKON LOVEにはならないよなー原作フジオはカンジの時点でも大分虚無ってるからなー」
ってことで一目惚れしたとかそういう描写はやめました。代わりに非常に穏やかな描写を入れます。
憧憬、みたいな。ふわーって点描飛んでそうな一家を遠くから一人見つめるような。
これ闇殺じゃなくてフジキド×フジオじゃね?って考えがちらつきましたが無視します年下が年上に憧れるホモいいじゃん!いいじゃん!

この時点で字数がだいぶ足りなくてどうしようか……と文字数カウンタとにらめっこします。
(予定ではここで話を終わらせるつもりでした)

4.描写の追加
暫く見つめてましたが数行足した程度ではどうにもならない不足だったため、もう1シーン足すことにしました。
時間軸をさっくり飛ばして現在なう。
深く考えてませんがフジキドとフジオにそれぞれの武器を持たせましたので、たぶん2部後半くらいだと思います。

「過去の記憶……覚えていたりするとウフフって声覚えてたら普通にバレてね?(気づき)」
ということで覚えているのは顔にしました。確かこの時点ではフジオはフジキドの素顔を知らないはず……?(たぶん)(知ってたらドゲザものですね)
逆にフジキドは一度戦ったニンジャとか顔とか絶対忘れないマンなのでどうしようかな……声かな……と思いましたが、
この話自体が一貫してフジオ視点なのとそこまで盛り込むと今度は字数オーバーの恐れがあったためフジキド側についてはざっくり略しました。
ハガネの恋人ベッピンに語りかけるシーンを入れて、文字数もきりよく3000字にできたのでおしまい。

「互いのカラテが交わった」は、普段の私なら「交錯した」と書く部分なのですが、ホモみを重点するために意図的に「交わる」という言葉を使っています。
こんな健全話でもな!闇殺ってつけちゃう以上は!ミリでもホモを感じる何かを入れないといけないと思って!(必死)


2時間ほどかかったのでもう最低限の誤字脱字確認だけしてさくっと投下しました。
が、やはり推敲不足。

推敲版を下にあげておきます(3004文字)。お暇な人は比較とかしてみてください。

推敲版

「……これは?」
大学生、フジオ・カタクラは同期の女学生から手渡されたその白い物体を数秒見つめた後、素直に疑問を口にした。
「モチヤッコちゃんネオサイタマ大学バージョンだよ?ほらここ、校章入っててー」
「……その、そうではなく。これを僕にどうしろと……?」
「頭に被って!チラシ配るの!……話聞いてた?」
彼は己の記憶を遡った。ここ数日、古文書の解読のために研究室に籠っていてまともに寝ていない。
ようやく一段落つき、食事でも摂ろうと学食へと向かう道すがら、彼女に捕まったのだ。
曰く、今日は学祭で、入場者にチラシを配るそうなのだが人手が足りないらしい。
辛うじて相手の顔を見て、同じ大学の学生だ、と認識できる程度の間柄の人間にすら頼らざるを得ないとは余程切羽詰まっているのだろう。
……と、考えたのだったか。或いは単に話を切り上げたかったのか。了承の返事をしていたことだけは辛うじて思い出せた。

15分後。
「エート……、……講堂でライブ……13時から……」
チラシの内容をカタコトめいて読み上げながら、モチヤッコ被り物を着用したフジオ・カタクラはチラシ配りに勤しんでいた。
この日のネオサイタマは珍しく晴れ、絶好の行楽日和であった。それなのにわざわざ大学の学祭に来るとは、世間も暇なのだなと彼は蒸し暑い被り物の中でぼんやり考えていた。
……流行に疎い彼が知ることはなかったが、学祭のメインは今彼が配っているチラシに大きく印刷されたアイドルグループのライブである。
ネコネコカワイイに次ぐ人気を誇る彼女たち目当てに、大学とは無関係の人間も多く訪れているのだった。
「講堂……ライブ……13時……」
しかし、彼にそんな事情は無関係である。そもそも今日が学祭というのも先程知ったくらいだ。食事と少しの仮眠をしたらまた解読の続きをしようと思っていたのに、どうしてこうなったのだろう。チラシを配る機械と化した彼であったが、やはり空腹と睡魔には抗い難く、加えてこの日光が、研究室引き篭もりの彼の体力をじわじわと奪っていった。
その時である。
「――うわっ……!?」
左後方、斜め下。完全に想定外の方向から何かに引っ張られ、フジオはバランスを崩した。尻餅をつき、手に持っていたチラシがバサバサと宙に舞う。
「モチーヤッコー」
「こ、こら、トチノキ!?す、すいません、大丈夫ですか……!?」
慌てた女の声。咄嗟にそちらを見ようとしたが被り物のせいで視界が狭く、女の肩辺りまでしか見えなかった。その両腕には、まだ幼い男の子供が抱かれている。
「だ、大丈夫です」
「モチヤッコー!」
どうやら彼女の子供に白衣を引っ張られたらしい。子供に引っ張られたくらいで倒れるなど、実際情けない限りである。とにもかくにも急いで起き上がらねば。その前に落ちたチラシを拾わねば。チラシは何処だ。
「――どうしたんだ?」
「ああ、あなた。実は……」
「チラシ……チラシ……」
見える範囲のものをかき集めて十枚、二十枚、全然足りない。風で飛ばされたか。いっそ被り物を脱いで探したほうが早いのでは。いやしかし、だが……。……そう思っていると不意に、彼の正面に人の気配がした。
「スミマセン、うちの息子が粗相を。これ、チラシです」
「あ、……ありがとうございます……」
チラシを差し出してきたのは、男の手だ。言葉から察するに父親だろうか。フジオはおずおずとそれを受け取った。チラシの枚数はこれでほぼ元通りだ。
((……学祭に、家族連れか。OBか……?))
フジオは顔を上げた。人の良さそうな、若いサラリーマン風の男の顔が見え、……目が合った気がして、伏せた。あまり赤の他人と目を合わせるのは得意ではない。他人はよくわからないからだ。
この数秒の沈黙を男はどう取ったのか。伏せた視界に再び男の手が映りこんだ。
「え……?」
「立てますか?」
差し出された手は、今度は何も握られていない。フジオはその意味を理解するのに数秒を要した。
「は……はい」
この手を取るべきか、取らざるべきか。いや、取らないのはそれはそれでシツレイに当たると、フジオは空いている手を差し出された手にそっと重ねた。直後、強く握られて引っ張られる。男の力だ。
「本当に申し訳ありませんでした。怪我は……?」
「大丈夫です。……ありがとうございます」
「ならよかった。……あ、チラシ1枚いただけますか」
「ヨ、ヨロコンデー」
フジオが差し出したチラシを、ドーモ、と男は笑って受け取った。
男が女のもとへと戻っていくと、再び女の謝罪が聞こえた。
「トチノキ、もういきなり人の服を引っ張ったりしちゃダメよ?ほら、モチヤッコのお兄さんにごめんなさいとバイバイしてね」
「モチー!ヤッコー!ゴメンナサイ、バイバイー!」
「うん、ちゃんと言えたな。……それでは、私達はこれで」
フジオはそちらに顔を向け、ゆるやかにオジギした。遠ざかる若い家族の背中を見送りながら、彼は小さく溜息を吐いた。
かつては彼にもあのように父と母がいて、抱きしめてもらったり、共に出かけたりしたこともあったのだ。
今はもういない。幸せな家庭というものは、いずれ消え行く泡沫のようなものだと思っている。だが。
「……父親……か」
引かれた手の力を、重なった体温を己の中に仕舞いこむかのようにフジオは手を固く握った。
人の愛し方はもうわからない。誰かと結婚し、子を儲けることはきっと一生ないだろう。
それでも、こうやって他人に自然に手を差し伸べられる、体温を持った人間にいつかなれるだろうか。
この背に刻まれた、カンジの謎を解き明かすことができれば。

――数年後。
「ドーモ、ダークニンジャ=サン。ニンジャスレイヤーです。……オヌシと再び相見える日を待っていたぞ」
「ドーモ、ダークニンジャです。……おれは待っていない……。また邪魔をしに来たか、狂犬め」
二人はタタミ十五枚の距離で向かい合った。
ダークニンジャの手には妖刀ベッピン。ニンジャスレイヤーの手には黒檀のヌンチャク。
互いの力量はわかりきっている。ウカツに仕掛ければ、その瞬間に勝負が決するだろう。だから二人はアイサツ後も暫くその姿勢で睨み合う。
……カンジのノロイを解いたフジオは、新たなノロイに堕とされた。即ち、ハガネ・ニンジャのソウルを宿して生きる、ダークニンジャという名の宿命に。
あの日手に覚えた、他人の温もりはもう忘れてしまった。彼を気遣ってくれた声も。
しかし、一瞬見えたあの優しげな笑顔だけは頭の一部にこびりついて残っている。
あの男が今の己を見たらどう思うだろう?
……否、考えるだけ無駄だ。ダークニンジャが忘れてしまったように、あの男もまた、フジオのことなど覚えていないはずだ。
今はただ、目の前の敵に集中すべし。ベッピンも早くこの男のソウルを吸いたいと鳴いている。
((ベッピンよ、おれのカタナよ。その期待に応えよう。おれの為に、おれが振るう。おれがカタナだ!))
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
二人の男の踏み込みは同時。数奇な運命の辿る先を知らぬまま、ただ互いのカラテが交わった。

*1:思いつかないときは全く関係ないことをしていたほうがよかったりします

『ニンジャスレイヤー』はネタ小説ではない

久しぶりにブログ行為します。
結論はタイトル通りです。
ので、対象読者は「ふーん(鼻ほじ)」とか「え?ネタ小説じゃないの?」っていう方向けです。
層に届くことを願っております。

ちなみに「ニンジャスレイヤー?なにそれ?」って人はここよりは非公式wikiの「ニンジャスレイヤーとは?」みたいなページのほうが解説としてはわかりやすいと思います。

そもそも何故ネタ小説と思われるのか

奇抜な日本観、「アイエエエ!?」「ドーモ、○○=サン」「マルノウチ・スゴイタカイビル」などの他の作品では中々見ないような奇妙な日本語。
これらがTwitterやニコニコなどで読んでいない人にも広まった結果、その部分だけが一人歩きしてネタと思われるに至った。のだと思います。*1

基本的に私はそれ自体を悪いこととは思ってません。
なぜなら作品というのは何がきっかけであれ、知ってもらわないことには始まらないからです。
コマーシャル、マーケティングというものが敢えて意図的にキャッチーな部分を抜き出して(或いはキャッチーなフレーズを作り出して)提示するのも、そのほうが対象の印象に残るからです。

例えば「大正製薬から1962年に発売、タウリン1000mgを含み……」とか商品説明するよりも「『ファイト!一発!』のCMでおなじみ〜」と説明したほうが客に「ああ〜」と頷いてもらえる可能性が高いのです。
ちなみにこれは言うまでもなくリポビタンDの話です。
当然作った側としてはファイト一発というキャッチコピーそのものではなくその効能・商品を売りたいわけですから、「ファイトーいっぱーつのアレね〜あのCMのアレね〜」で終わってもらっては困るわけですが、まず知ってもらう第一歩としてキャッチコピーが必要なわけです。
その意味ではニンジャスレイヤーが未読者から「アイエエエの小説」と呼ばれることについては、特に異論もなく、「そうだね〜ああそうだね〜アイエエエの小説だよ〜」と頷くわけです。実際間違っているわけでもない。

でも、そこで終わってほしくないのです。

真価はもっと深いところにある

また例え話になりますが、「ジョジョの奇妙な冒険」という作品がありますよね。
「絵が濃い」「あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!(AA略)」とか、未読者でも知っている要素を挙げればまあ、きりがないような名作です。
でも、それだけの知識で作品をわかった気になっている人を見ると「いや……いや違う、そうじゃないんだ!確かにその台詞はあるけど!でもそうじゃないんだ!!それだけじゃないんだ!!!」と高速でろくろを回したくなるような気持ちになりませんか?なりませんか。
あなたの一番好きな作品やキャラが「ただのハーレムアニメ」「腐向け」「中二臭」「新参ホイホイ」と言われていることを想像してもなりませんか?なりませんか。話を進めたいので、なったことにしていただけませんか。

これは私何度かTwitterとかで言っているのですが。
『ただ世界観が奇抜で登場人物がアイエエエ!?ニンジャナンデ!?って言ってるだけの小説が、少なくとも作品に何の興味もなかった貴方の目に触れる程度に知名度を上げ、その挙句書籍化するわけないだろ』ということに尽きるのです。
どんな商品も作品もそうですが、外からちらっと見ただけではわからない魅力があるのです。
私は一読者として、その魅力を伝えていきたいし(逆に言えば作品自体にそうさせたいと思わせるパワーがあるということです)、理解してくれた方とは「わかってくれたかね……!」と涙ぐみながら両手を握りたい衝動に日々駆られているのです。
一方で「やりすぎると引かれる」とはよく言われるので*2、最近はなるべく自重しています。これでも自重しています。


最悪、読んでもらえなくてもいいです。
体質的に酒が飲めない人が「酒が飲めないなんて人生の半分損してるぞ!」みたいに言われても「えぇ……」ってなるのと同じように合う合わないってのは誰にでもありますし、そもそも「私は既に心に決めた嫁がいるんだ!他作品に浮気している余裕などない!!」という人もいるでしょう。時間は残酷なまでに有限です。
僕も本当は早くキルラキル観たいんですよ。でもその前にタイバニアニメを消化して、それから昨年オススメされたシャーロックのドラマを観たいんです。でもニンジャスレイヤーに多くの時間を割いています。
それはこれら他作品に興味がなくなったわけではなく、今ニンジャスレイヤーについて何かすることに忙しいから、なんです。


なので、読んでもらえなくてもいいんですが、「ただのネタ小説だろ」からもう一歩進んで「ただのネタ小説だと思ってたけど、書籍30万部も売れてアニメにもなるらしいし、何か俺の知らない魅力ってやつがあるんだろうな」って思っていただけると大変喜ばしいのです。
今の文章あからさまにマーケティング行為っぽかったですね、はい、すいませんケジメします。

勿論それはニンジャスレイヤーに限らず。
「人気のある作品」というのは「外側から見ただけではわからない魅力」というのが必ずどこかにあります。
どうしてもキャッチーなレッテル貼りというのは無くなりませんし、自分が関わる気がないモノはそう分類してしまったほうが楽ですが、もう一歩、意識だけでも、「それだけではないのだろう」と思ってほしいのです。


そしてその上で「読んでみるかな」と思っていただけたなら、いつでも、Twitter公式アカウント@NJSLYR、書籍、コミカライズ、ファン作成の非公式wiki、(将来的には)アニメなど、貴方が一番やりやすい方法で「ニンジャスレイヤー」という作品にアクセスしていただければ、これほど嬉しいことはありません。

『ニンジャスレイヤー』はネタ小説ではなければ何なのか

やっと本題です。前書きが長くて申し訳ありません。
ストーリーについて解説してもよいのですが、それはもう他の方も行っていますし、上のほうでリンクしたwikiの「ニンジャスレイヤーとは?」というページや、各エピソードについてはそれぞれwikiページであらすじも掲載されておりますので、ここではばっさり割愛します。

ニンジャスレイヤーは一言で言うと、Twitterライブ紙芝居小説です。
小説なのに最新更新媒体は「Twitter」。これは書籍が出た後も変わりません。
「Web小説」と言っても、同人としてサイトに掲載していた小説がたまたま認められてプロデビューした、という流れの作品でもないのです。

元々はアメリカ人二人の原作者が書いた英文の小説を、ほんやくチームを自称する集団(少なくとも二人)があのキテレツ文体に翻訳し(原作からして普通に日本語が出てきてたり結構わけのわからない感じではありますが)、140文字というTwitterの文字数制限に合わせ、リリースしています。

書籍をご覧になったことのある方ならお気づきでしょうが(見たことのない方はこちらをご覧ください)、いわゆる「小説」の体裁はまるで守られていません。「」の前後で改行もないし、1節がみっちり詰まっています。
それこそ本当にTwitterの1ツイートを縦書きにして空行を挿入して並べたような形をしています。
140文字に収めるためにやむなく長い物語を切断しているわけではなく、意図的にこのような形で翻訳されているのです。

書籍で読む場合、この空行は読者が自由に読み飛ばすことができます。寧ろ人によっては「スカスカ感」「この空行を詰めればもっと薄く(安く)なるのでは」という不満を覚えるかもしれません。
しかしTwitterでリアルタイムに連載を追っている人の場合、この空行ごとに、少なくとも5分以上の「待機時間」が生じています。
文章ではあるけれど、文章のように読者の自由なタイミングで次に行けない。
しかし映像に近いと例えるには、話の進行が断続的に過ぎる。
演者たるほんやくチームの発言を読者が今か今かと待つスタイルは、紙芝居というのが一番近そうです。
(紙芝居と最初に例えたのは私ではなく別のヘッズなので、表現をお借りする形になりますが)


このやり方は「好きなように小説を読みたい」とか「そんなに何時間もTwitter見ていられない」という方には難しいでしょう。
実際そういう人のためにログのまとめや書籍というものが存在していると思います。勿論リアルタイムでないというだけで面白さが損なわれる作品ではないです。
ただ、多人数で同時に同じものを見ているからこそ可能なファン同士の一体感というのも存在します。
過去にも何度かありましたが、一番直近で言うと昨日(正確には日付変わって今日の深夜)、作中のあるキャラクターが敗北濃厚な、文字通り命を賭けた戦いへと身を投じました。
彼は先月下旬開始のエピソードで初めて登場したキャラクターで、何年も前から愛されているキャラクターではありません。
しかし彼の生き様は短い間でも多くのファンを魅了し、彼が作中で行ったキツネサイン*3を真似て多くのファンが彼のためにキツネサインの写真を投稿しました。深夜にもかかわらずです。(まとめはこちら)

こればっかりはいくら言葉で説明しようと説明しきれないのですが、「自分ひとりでパソコンやスマートフォンを見ながら文章を追っているだけではなく、まさしくライブ的な一体感・同期・興奮が存在する」という、他の小説作品では中々ない、「ニンジャスレイヤー」という作品の最大の魅力であると思っています。

書籍や他媒体でニンジャスレイヤーの面白さに触れた方は是非、#njslyrタグを見ながらリアルタイムの更新を追ってみてください。
きっと今までのどの作品とも違う「読書体験」ができると思います。

*1:2ch界隈は詳しくないのですが、随分長い間、ラノベ系の板以外ではほとんどノーマークであったとうかがっています

*2:私も名前を辛うじて聞いたことのある程度のアニメDVDとかいきなり貸されても「お、おう、わかった、気が向いたら視るよ」ってなるタイプです

*3:親指、中指、薬指をくっつけ、人差し指と小指を立てて作るアレです

テキスト(カラテ)メイキング

ブログとかの文章ではなく、小説(二次創作)の文章について。
文章にメイキングも何も……という感はあるかもしれませんが、以前Twitterでそのような話題が出ていたので、少し書いてみます。
書いたら滅茶苦茶長くなってしまいました。ご容赦ください。

今回はTwitterに投下したニンジャスレイヤー二次創作「ニュー・デイズ・ムーブ」および、
らせんさんのテキストカラテ・エクササイズ企画に参加した際に書いた「ストーキング・シェイド、ライク・ア・シャドウ」をメインに書いていきます。

(他、最近の文章はPixiv(ほぼホモ)privatter(フォロワー限定公開・ほぼホモ)テキストまとめ(ほぼホモ)にあります)

0.下準備

大体以下の環境が揃っている状況で書くようにしています。

  • インターネット接続環境があるPC(資料集め、辞書引き等)
  • 快適*1テキストエディタ
  • 独り言を言っても許される環境(※可能ならば)

1.ネタ決め

何を書くか、を決めます。テーマ決めです。
僕の場合ここで「誰」を書くかを決めてもだいたい上手くいかなくて投げてしまうので、「何」を書くかを決めてしまいます。*2
最近は140文字お題ったーさんにキャラ名を入れて「おっこれは書けそう」って思ったものを書いたり、TLで見かけたネタから話を広げることが多いです。

ニュー・デイズ〜についてはデストラップ連載中辺りから「シマナガシの過去……過去話……そこに至ったとうとみ……とかそういうのを……なんかしたい……」と思っていて(本当にこのレベルのぼやっとした動機で書き始めます)
ストーキング〜については「アッアッらせんさんの企画だ、えっとフジキド登場させて爆発四散させればいいんだね!わかった!」とかそんな感じです。本当にふわっとしてます。

2.キャラ・世界観設定

人狼やROの二次創作*3やオリジナルキャラを登場させる場合や世界観から構築する場合は書き始める前に話の中での役割や性格、口調など最低限のところを決めておきます。
と言いながらストーキング〜では即興性が求められていたので*4、その最低限の口調すら決めていません。

エクササイズ0、敵ニンジャの「テイザー」は概ねこんな経緯で決まってます。
「すぐに(ノー資料で)書けるのはペケロッパやコトダマ空間系ニンジャだけど、すぐ書けるものを書いていたら練習にならないのでは?」
「そういえば銃系の資料持ってたしそういう系にするか(広げる)(テイザー銃というものを見つける)(よしこれでいこう)」
それから一応Wikipediaでテイザー銃とはどういうものかを最低限確認し、後は「テイザー ニンジャ」でググって既存ニンジャに同名キャラがいないことを確認したくらいです。なので設定は殆ど何も書いてないようなものです。

3.書きたいものの肉付け

1で決めた「ネタ」をもう少し具体的にします。書きながら思いつくこともありますが、大体書く前に決めます。
ニュー・デイズ〜についてはこれだけは書く前に決めてました。

  • アナイアレイターとスーサイドを喧嘩させる
  • その流れでルイナーとスーサイドに会話させる
  • 同様にフィルギアとアナイアレイターに会話させる
  • エンガワ・ストリートのアジトを作る
  • シマナガシの名称提案をスーサイドにさせる
  • フィルギアに(この部分は最終的に続編に持ち越しになったので伏せます、が、ここが過去話の中で一番書きたかった部分でもありました)

ストーキング〜については肉をつけるより前に骨(主人公登場→敵登場→フジキド登場→敵爆発四散→エピローグ、という流れの軸)があったので、その流れから大きく外れないことだけを意識して、とりあえず書き始めます。
クルミ、という人物名を出した時点では本当にツイート1に書かれた「あんまり美人じゃないけど若くて豊満」ということしか決めていませんでした。
その後数ツイートかけて「何故そんな女性がコメダ・ストリートで一人暮らしを始めることになったのか」という設定の肉付けをリアルタイムで行っています。
この時点で、

テイザーが全然関係なくなっていることに気づき、頭を抱えます。

4.冒頭を書く

冒頭を書きます。ニュー・デイズ〜についてはニュー・メッセンジャー〜の続きの話と決めていたので、割と楽でした。
ストーキング〜については主人公登場が冒頭になります。

それ以外、下地になるものが特にない場合。
二次創作の場合は最低限「誰」が喋っているかさえ提示できればいきなり会話文から入ってもなんとかなりますが、世界観説明が必要な物語の場合は極力背景描写からするようにします。忍殺(原作)は情景描写から入ることが多いですね。
書きたいものが「オチ」に相当する部分である場合などは、冒頭にその「オチ」に繋がる話を持ってくるという手もあります。(いきなり起承転結の転結の一部をチラ見せしてからタイトル→起の部分に戻る感じ。忍殺だとゼアイズの#0とかが該当すると思います)

5.本文を書く(1:書きたいものが書けない場合)

冒頭から繋がるように文章を書いていきます。最初から「140文字以内」とか決まっていない限りはだらだら書いていいと思います。
キャラがしっかり立っていれば書いているうちに脳内でキャラが勝手に喋りだすのであとはそれを黙々とアウトプットする機械になればいいのですが、そうでない場合も多々あります。
ニュー・デイズ〜は「アナイとスーサイドの喧嘩の原因なんだよ」で詰まりましたし、ストーキング〜は「テイザーはクルミにどんな違法行為するんだよ」で詰まりました。

そういう場合は一度引きます。イメージ的には、キャラに近づきすぎたカメラをぐっと引いて背景を映す感じです。
ニュー・デイズ〜(シマナガシ)については、「アナイアレイターが短気である」ことがフィルギアの台詞で示されています。彼の原作内の行動も実際短気です。そしてスーサイドは多くの場合、それを止める立場にあります。
止める立場にある人間と喧嘩する場合、「何らかの意見や価値観の相違」「相手への直接的な侮辱」などになるはずです。
(第三者を巡っての喧嘩は中々起こりにくいでしょうし、そもそも巻き込まれる第三者がいません。ルイナーを巻き込んだらルイナーに殴られて終わりです)
また、アナイアレイターは短気ではありますが節々で「なんだかんだで良い奴」であることが描写されています*5。この時点で「取っ組み合いの激しい喧嘩」ではなく「ちょっとした言い争いレベル」に収まることが予想できます。
(そもそも最終的に仲間になるという未来に繋げていくための過去話なので、人間関係が決裂するレベルの喧嘩はできません。彼らはニンジャなので本気で殴り合ったらどちらかが死んでしまいます)

余程原作設定ブレイクとかの無理のある二次創作をしていない限り、キャラの背景に注目すればそのキャラが取りうる行動、選択肢、発言などは見えてくると思います。
その上で必要があれば設定を捏造します。
(ホモい二次創作であれば「原作であのキャラに対してああいう行動を取った」「あのキャラとは親友という設定がある」という背景から、「あいつはあのキャラのことが好きなんだ」という設定捏造です)
今回はアナイアレイターに「身内が自殺している(≒自殺という行為そのものに良い感情がない)」「仲間を殺している(≒仲間を傷つけることに苦い思い出がある)」という設定を捏造しています。

ストーキング〜については、クルミに対する違法行為をすぐに思いつけなかったので、
「クルミに違法行為を働こうとするヨタモノに違法行為をする」という面倒くさい二重構造をとりました。
数を殺しておけばWasshoi!ポイントが溜まるだろうという安直な発想です。

ところがその安直な発想のせいで「こいつヨタモノしか殺してないしどうやってフジキドに殺忍させよう…」と悩み始めてしまったので、「何の落ち度もないクルミを最終的に殺害しようとする」方向に舵を切りました。
主人公がようやくピンチになったのでフジキドのエントリーです。
しかし「Wasshoi!」できそうになかったので、比較的静かなエントリーとなりました。
この時点で「これはもしかして暗黒非合法探偵案件では?」となり、殺忍動機付けも「依頼人がいる」という設定が追加されました。
テイザーに「元・ストーカー」という設定がついたのも、ツナミ=サンの名前を出した後です。
行き当たりばったり万歳。

6.本文を書く(2:何を書くべきか迷った場合)

引き続き本文です。

さて、ニュー・デイズ〜では無事に(?)喧嘩をして、アナイアレイターが退出し、スーサイドとルイナーが二人きりになりました。
さてようやく書きたかったルイナーとスーサイドの会話シーンです。まずは……。

「……何喋らせよう」

……となった場合。
こういう場合も落ち着いて背景を見ます。そして、次に繋げたいシーンを確認します。
最終的に仲直りしてほしいので、このシーンは当然それまでの繋ぎとなります。
一番ストレートなのは、ルイナーに「仲直りしろ」と言わせることです。
でもこの話はそれだけでは足りない。スーサイドとアナイアレイターが喧嘩して仲直りするだけではスーサイドが「シマナガシ」の一員になる話にならないのです。ルイナー、そして、フィルギアとも仲間であることを確認するイベントが必要です。
なのでああいう形になりました。ルイナーは一言も仲直りしろとは言っていません。
ただ「俺はこう思ってる、お前はどうだ」と示し、スーサイドが自分の意思で謝る、という展開へと繋げられるようにしています。

7.オチを書く

先に言いますが、僕はここについては未だに良いやり方が見つかってません。(なんかぶつ切りみたいな終わり方になることが多い)

書きたいことを書き終わったら話を終わらせます。
余韻が残るような書き方をしたいのですが……未だに手探りです。
その点ニンジャはポエットな終わり方をすることが多いのでスゴイですね。原作者=サンのワザマエが光ります。

ストーキング〜は「主人公のその後」を書くことで〆です。
なんとか無傷で生還したクルミちゃん、この生活力なさそうな子これからどうするねんと思ったので迎えに来てもらいました。
男が来るのは違うかなーと思ったので(恋人がいたらこんな地域に一人暮らしせぇへんやろ、みたいな)、おばあちゃんです。
「頼れる親戚がいるなら先にそっち頼れよ!」っていう突っ込みどころには「田舎だからイヤだった」というアンサーをつけて地の文で描写しています。
冒頭シーンをまるで回収していないことに気づいたので、ラストで「下の部屋にいたのは実はフジキドだよ」オチをつけました。暗黒非合法探偵行為のために空き部屋で張り込んでたんでしょうね。たぶんね。住んでたわけではないと思います。

ニュー・デイズ〜については書きたいことは未消化です。スーサイドがシマナガシの名を提案し、それに皆が同意したシーンを書いた瞬間に「あ、この話これ以上続けるよりここで切ったほうが綺麗だわ」と気づいてしまったので、そこで〆ました。
前半がゆったりしていたのもあり、ここからイクサのシーンにもつれこむよりは全体的に「シマナガシカワイイ」でまとめてしまったほうがよいね、という感じです。

8.読み返し(軽い推敲)

最初から読み返します。可能なら声に出して読みます。台詞も?台詞もだ!
この段階ではあからさまな誤字脱字、あとは日本語として読む場合に引っかかる場所の修正しか行いません。
意味が曖昧な単語は必ず辞書を引いて意味を確認します。*6

この作業を終えた状態のニュー・デイズ〜がこちらです。
そもそもまだ140文字にすらなっていません。

ストーキング〜では「投稿直前にもう一度本文をざっと読む」作業がここに当たり、これ以上の修正はありません。
この時点で多くの誤字脱字を修正してはいますが、割と致命的な誤字が残った*7りするので、推敲と読み返しはできる限り複数回やるべきだと思います。

9.冷却

テキストエディタを閉じます。可能なら一晩寝ます。

10.推敲

頭が程よく話を忘れたところでもう一度読みます。気づかなかった誤字脱字がボロボロ出てきます。
また、ここで話の構造にも手を入れます。「ここのモノローグはもっと短くていいのでは?」とか「この台詞に対してこの地の文では説明不足ではないか?」「この展開に至るならそれ以前にフラグを立てておくべきでは?」みたいな感じでガンガン加筆修正します。
ニュー・デイズ〜に関してはスーサイドの「孤独」についての地の文の言及追加、最後に唐突に出てきた『シマナガシ』を#2の時点で存在だけは提示しておく、などの修正がありました。
140文字分割はこの段階で行っています(ぬん=サンのテキストカラテツールには本当にお世話になってます)
元々テキストカラテ風味に書いていたので、分割に関しては「話の区切り」を重視してやっています。必要ならば表現を変えつつ。

ストーキング〜でこの作業を行ったのは投稿後にまとめていただいたものを他の方のものと一緒に再読した時ですが、

とか、もう後から後から出ます。推敲せずに投稿するとこんな荒っぽいんだなと痛感した感じです。

11.タイトル決め

だいたい投稿直前に内容を見て決めることが多いのでここに持ってきましたが、「ニュー・デイズ・ムーブ」は書き始める前に決定しています。
脳内で考えていた時点では「デイズ・オブ・シマナガシ」とか「ライズ・オブ・シマナガシ」とかだったんですがどちらも原作のタイトルと被るのでボツ。
シマナガシの名前決めも含みたかったのでシマナガシという単語も意図的に外して、「なんかこう……日常……いや……スタート地点の……日常の始まり……そういうイマジナリ……」とか考えながらgoogle翻訳さんやExcite翻訳さんと相談して決めました。(英語苦手)

「ストーキング・シェイド、ライク・ア・シャドウ」(影めいて陰を追う)ですが、
ストーカーであった(という設定にされた)テイザーの行動そのものを指してもいますし、暗黒非合法探偵フジキドが事件の陰を追うという意味も含まれています。(シャドウには刑事、スパイなどの意味もあります)
ダブルミーニング大好きマンなので思いついたらどんどんします。文法は苦手ですが!

でも基本的にタイトル考えるの苦手なので、下手するとここで本文より時間が掛かります。本文ができてるのにタイトルが浮かばないから投稿できないとかホントよくあります。

12.投稿

十分に推敲したら投稿します。
ぷらいべったーやPixivに投げた小説の場合、投稿後に読みかえして更に修正することもありますが、一度出してしまったらもうあからさまな修正はしないようにします。







とまあ、こんな感じです。後はジャンルによっては以下のようなことを重点します。

  • 登場人物が「泣く」、或いは読者を「泣かせる」ことを目的とした物語では本当に自分も泣けるか

「自分が泣けないもので他人を泣かせられるわけねーだろ」が信条ゆえ、ここら辺は特に気にしています。
また「泣きながらの台詞」がある場合は実際に泣きながらその台詞が言えるか?(特に感極まってる時はある程度言葉は詰まるのが自然です)とかの確認もします。このための独り言環境でもあります。

  • 身体の動きに不自然はないか

ここはまだ研修中です。主にバトル描写において、この動きをした直後にこう移動するのは無理だろう?とか、ここを負傷しているキャラはこの動きはできないのではないか?とか、そういう辺りです。
……ニンジャは超人なのである程度なんとかなってしまうのですが、普通は腕の骨1本イったらかなり動きが制限されるはずです。

  • 喘ぎ声がループしていないか

エロ話の場合。ぼーっとしてると3行上と全く同じ喘ぎ声になってたりするので、うまいことなんかします。
エロじゃなくても、負傷時の呻き声とかもそうですね。使える言葉が制限される分、なんとかバリエーションを確保したい。


話が長くて申し訳ない(これも自分の文章の課題です)。テキスト(カラテ)メイキングについては以上となります。
僕は皆さんがどうやってテキスト書いてるのかってことにも興味がある(そしてあわよくば吸収しようと思っている)ので、是非なんかしてください。よろしくお願いします。ではでは。

*1:元に戻す・やり直す機能、文字数カウント、テキスト検索・置換、テキスト比較、画面分割等が行えて動作が軽い

*2:誰、から決めてしまうと最終的にそのキャラの動きに目的がなくなって迷走してしまうのです

*3:原作にキャラの性格設定が存在しない作品の二次創作

*4:というか私はただでさえ2時間ほど企画に遅刻したので

*5:スーサイドからの「クソ野郎」扱いを許している辺りとか

*6:特に僕は「おもむろに」「にわかに」「やおら」辺りの単語をしょっちゅう混同するので、本当に気をつけています

*7:具体的に言うと19の「モリタイチロー」……正しくは「イチローモリタ」です